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「ブラックスワン」は俺のホラー。

  • 2011/05/29 日
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一番怖いのは「壊れる自分を見せつけられること」ということを実感する、少女漫画的ホラー(しかも極上)。 見せ物としても損ないから。こわいし。

クラウスノミ張りの異様さです。 ブラックスワンはこわい。

心理サスペンス的な文芸大作と思って観にいったら、ど根性少女漫画的なガッツリホラーでたまげた。

どうやら、かなりの人がそう思ったらしく後ろの席のカップルは、悲鳴より大きな息を「はふーっ!はふーっ!」と連発してよりホラーだったし、終わった後のロビーでは「怖い映画嫌いなのに」とうなだれる彼女を、しっかり今晩への期待を盛り上げるべくチョイスしたであろう彼氏が所在なさげに慰めていた。ご愁傷様。

もちろん怖いだけじゃなく、ひとつの事に全身全霊をこめて打ち込むことの壮絶さとか、気高さもぶっこんである。

ストーリーは割合単純でベタ。

NYのバレエカンパニーで、将来のプリマを目指すニナ。
次回の公演は、まったく新しい解釈によるフレッシュな「白鳥の湖」。野心家で好色な好色って、な監督のトマスはそれまでのプリマ、ベスを引退に追い込み、ニナを抜擢する。

バレエ一筋に育ち、純真無垢でストイックなニナは白鳥にぴったり。
しかし、対照的に情熱的で奔放、猥雑で官能的な黒鳥を演じることができない。今回は二役を演じないといけないわけ。

監督はセクハラ三昧しつつ、厳しい要求を求めたおす。
一方で代役(バックアップ)に選ばれた、黒鳥そのものの奔放でビッチなイケてるリリーは、虎視眈々と主役の座を狙い、家に帰れば娘に夢を託す大好きな母親が彼女の前に立ちふさがる。周囲の嫉妬と嫌がらせ、大抜擢が故の過酷なプレッシャー。

彼女をとりまくすべてが彼女を追いこみ、彼女は猛烈に壊れ始めるが。さて、彼女は見事に本公演をつとめることができるか?

と、ゆー。
典型的な「プリマを目指すど根性バレエ漫画」みたいなストーリーを、丁寧に丁寧に描写してなおかつ手法として下世話をおそれず積極的にホラーを取り入れている所があたらしい。「これってあの映画」って指摘できるくらいホラー映画の引用も多い(パクってると思う)。

 

image いくつかの軸があって。
太い軸は「完璧を目指す悲劇」。

どれかのトレイラーなどでもピックアップされていたけども、いつまでたっても完成度ばかり求めて感情の解放ができないニナに苛立った監督が「なぜ感情をもっと出せないんだ?」と問われて、キッと見返し「完璧に踊るため」と答えるニナ。

ここがラストまでずっと引っ張られる映画の中盤での重要なシークエンスですが、ここでのナタリーポートマンの普通だけどおや?っと微妙にに違和感を感じさせ、後の展開を暗示するあたりが最高。

監督とニナの「完璧」は全く違うものが、ラストに向けて悲劇的な意味で収束するサスペンス!


壊れる映画なので、理屈の上でも最初は逆の完璧を置くのだとはわかっていても、やっぱり感じる完璧を求めるが故に、自分で自分を壊していく悲劇。

もう一つは「親子の絆と恐怖」。
母親は若かりし頃、自身もプリマを目指したものの、ニナの妊娠をキッカケに夢をあきらめた敬意があるわけ。で、その夢を娘に託して猛烈に過剰な愛情を注いでいる。明らかに過剰。

一方ニナは母親への深い愛情と依存、自分のせいで夢を諦めたという負い目がないまぜになって複雑な感情を抱いている。

アロノフスキー監督は、母親に古典的なホラー的役割を負わせています。

ホラ、古来より「おっかない母親」はホラーの重要な役割。とにかくこええ!
セクハラ監督に、「セックスを知らないならオナニーしてこい」とムチャを言われ(こういうタイプのおエラいさんてな)、マジメだから自分の部屋でやろうとしたニナ。

突然、ドアがバーン!
「ニナなにやってるの?」こえええ。あるある。俺もあった。みたいな。
あとはニナ子供からの悪い癖で背中をかきむしってしまうことが発覚して、血走った目でハサミで爪を切るシーンなど、「絶対!指切るんだって!」と叫んでしまう痛いシーン。そうそう、前半は痛いシーンが多い!

始終こんな感じなんですけど、一番怖いのはそこじゃなくて、どーもどこかで「実は母ちゃん怖いんじゃなくて、そういう風に見えてるだけ何じゃないの?」って、ちょいちょい匂わせるところ。最後までハッキリわからない。

image えええっ!見えてるモノってホントなの?という、現実がぎゅううううっとゆがむあたりが怖いです。

自分的にも、子供の頃の母親への依存と恐怖は身に染みて覚えがあるだけにホントに怖い。

その対として重要なのが「ライバルとの確執」。

お母さんが怪物的ホラーの追い込む役割で、ライバルのリリーはリアルな小悪魔的スリラーの引きずり込む役割。

とにかく奔放で極悪。男でも女でも寝るわ薬はやるわ、足を引っ張るわとやり放題。だけど、確実にナタリーポートマンのニナより魅力的。

始終、イヤーな気持ちになりつつこちらも悪の魅力に惹かれていきます。

でもね。ってあたりが、この映画一番のワンダー。

そして最後に「プレッシャーという毒」。
まあ、これは重責という高いところにあるものをつかめば、背負わざるを得ないモノ。だけど、それを真正面に受け止め蝕まれていく恐怖は誰にだって多少は覚えがあるリアルな恐怖。

これをどんどん助長するセクハラ監督トマス。
なんせ、隙さえあれば二人きりになりたがる、キスしたがる、触りたがる、股間に手を伸ばすってチョコボール向井ですか。という。

宗方仁的な匂いもあって、どっちなの・・・ってところも。

こうやってずんずんラストに向かって走っていくのですな。

映画自体は必ずしもすべての人が共感するとは思わないけども、ナタリーポートマンがアカデミーとるのは当たり前だよね。っという大熱演は見所。てか、ホラー映画でナタリーさんの壊れ芸を愉しむつもりで観ても全然いいと思います。感動すると思う。

個人的には「現実が歪んでいく」映画が大好きなので、壊れていく過程を丁寧に描くこの映画大好きです。この映画は結末がわかろうがなんだろうが関係なく「過程を見つめる映画」です。

最初は監督やら母親やらライバルや、主役の重責などに追い込まれていくニナが悲劇の主人公なのですが、あるところからそこらや現実の境目も曖昧になり、敵も味方もわからなくなる。

恐怖の元のリリーも母親も監督も、ぜんぶぜんぶ最初から後につれどんどん印象がブレてくる。

最初は被害者なのに段々被害妄想ではないかとなってくる。被害者か加害者かもわからない。結局、自閉していくような気がするところにブルブル震えます。これはこわい!

これは自分的には気がつきゃ被害妄想になって、ハッと我に返るとどうやら加害者になってるらしくてイヤーン何もなくなっているってことは良くあること。あ、これは性格か。でも誰にもある恐怖ではないですか。

アロノフスキー監督は「π」「レクイエムフォードリーム」「レスラー」あたりは猛烈にスキなので。そういう人はおすすめ。 でも意外と言われてるほど「官能的」ではなかった。

忘れちゃいけない。個人的にとても強烈だったのは、ニナの抜擢に追われる元プリマのベス。
これがなんとウィノナライダーで、過去の人としてひどい仕打ちを受ける。俺、ウィノナライダー、アイドルだったのに・・・

アロノフスキー監督は「レスラー」でも落ち目のレスラー役を、落ち目のミッキーロークにやらせたりして現実と少し被せるような残酷な面白いことが好きな人。今回もきっとそう。結果、役者は称賛得て復活するのだからいいんだけどね。

そうね。
映画の中で、ニナの対立軸として完璧とは技術だったり気合いではなく、人生すべてをあまねくさらけ出すことと、セクハラ監督がことあるごとに形を変えて主張するのですが、これはアロノフスキー監督の監督術そのもの。主張を被せているのだね。

もちろん華麗なバレエのシーンもご用意。
ここでも芸術的に終わらせず、ホラー手法をガンガンにぶっこんで盛り上げます。

なんていうのかな。
「マジメにやってるやつが報われない感」が意地悪にも感じられのね。不良が更生したらすごくいいこと、コツコツやってるやつあ報われない的な。それってどうなんだろうとね。でもラストに向けて美しく、すごくベタだけどもニナの理想は成就します。よかった。良くはないですが。

でも、これって「レスラー」とまんま一緒かも。
恐らく裏表になって居るんだと思う。

レスラーは敗者への悲しみと称賛で、ブラックスワンは勝者への賛美とレクイエム。 裏表。

で、実はどちらも同じ「行き過ぎると悲劇。だけど美しい」と、同じことを言っています。
この監督の映画はどれもこれもそんなタイプの人間が出てきます。行きすぎた人間達へやさし~い視点で花束を贈るような所がどこかにあるので、いつもちょっと羨ましくなる。

やりきった人間だけが手にするなにかってのはきっとあって、それはダラダラ生きてる自分のような人間には決して手に入らないものってことなのかな。

 

これ言い忘れそうになった。自分的には大事なこと。


面白かった。あんまり期待のハードルをあげずに見に行くのが愉しむのがコツよコレ。うん。

 

余談だけど、せめて今敏監督の墓前で手を合わせる位はしておいた方がいいと思う。「レクイエムフォードリーム」込みで。ええ。

 

映画『ブラック・スワン』公式サイト

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