2004年05月19日

コンビニのギャルソン

や。週間になってる。すみません。久しぶりに忙しい毎日でございます。

特にここ数日は家から一歩も出られぬ軟禁状態。なんとなくSOHOチックな風にも思えますがどー考えても、「土方」という表現上不適切な言葉しか浮かびません。どうしましょう(どうしましょうっつわれてもな)。

そんで深夜にコンビニに行きました(一歩も出られぬはどこいった)。

深夜のコンビニは風情があって私好きなんですけど、その日はリハビリもかねて遠い方のセブンイレブンまで自転車で(一歩も出られぬわ)行ったのですが、ちょうど女の子2人組が出てくるところですれ違いざまにクスクス笑うのに気づきました。

は。もしやチャックが開いているのでわ(四コママンガのよう)!開いてません。
は。すっかりハラが出てきたのを笑われたのでわ!アメリカ海軍特殊部隊ネイビーシールズでも採用されている、ダブル・ストレート・レッグ・ローイング、通称DSLLで上下腹筋を鍛える魅惑のシーソー運動アブウェッジを導入して割れた腹筋を目指さなければならないのでわってなげーよ。

よくわかりません。
店内はレジカウンターに従業員の姿もなく、コンビニ強盗盗り放題といった風情でしたが、特に変わったところもなく、とりあえず立ち読みなど(めちゃめちゃサボってるのがバレバレです)していましした。

「大変失礼しました」
という素敵なテノールが聞こえたのはその時です。
フッと振り返るとレジにお客さんがいて、どこからか左門豊作みたいなメガネをかけた(誇張なくまんま)やたらと図体のでかい兄ちゃんが走り込んで来たわけでございます。

それはいい。そういうのはよくある風景です。彼はその後に続けて
「ただいま少々席をはずしておりまして」
と、良く通るテノールで言ったのです。

よく考えてみてください。コンビニであなたは、従業員がいなくて急にやってくるなり「ただいま少々席をはずしておりましてと言われたことがありますか。私はないです。ちょっとした違和感でございますね。

でもまだいい。丁寧な従業員というのもいるものです。感心といっても差し支えないでしょう。
私は立ち読みを続けたのです(いつまで読んでるかという話もあり)。

すると今度は
「デザートにシュークリームなどいかがでしょう?」
と、テノールが聞こえてきたわけです。さらにハっと振り返ると、彼はバレエダンサーのように、指先まで十分神経の行き届いたようなピンと伸びた指先で張り付いたような笑顔をちょっとかしげつつ、カウンターの上に並んだシュークリームを差しているのです。クイズ番組でアヤパンが「商品はこちらです」と手で差すような、あげな形です(急に博多弁)。

その女性が「いいです」みたいな事を言ったのでしょう。彼はウヤウヤしく会釈したですよ会釈。

左門豊作の顔と四大テノールの声を持つ彼はコーディネイト販売を旨としているようです。
次のお客さんには「アツアツのおでんもよろしいですよ?」とほほえんで居るではないですか。しかも、買うしお客さん。

立ち読みどころではありません。
私のアンテナがビビビビビっと、小躍り指数140%で反応しています。

見るところ20台後半。ちょっとホッペが赤いです。身長が180はありそうで、んでもってデブの人といって差し支えないでしょう。彼の挙動はすべてがキチキチしていて、時に美しくターンしたりしてます(おでんの追加とかだけどな)

彼は元ホテルマンではなかろうか。と私推察しました。
身のこなしや、言葉の固さがどうも不思議なくらいホテルマンぽいではないですか。

しかし、一つのことに気づきました。
例のシュークリームを差す手の形はおでんでも、サンドイッチ差すときも一緒で(彼は「サンドも入ったばかり」と「サンド」と小粋に略していた)、なおかつ右手に気を取られていましたが左手も遊んでいませんでした。

右が手のひらで美しく指すなら左は手の甲を美しくのばし、その手の甲は右手の平を指している。おわかりですか。
レストランのギャルソンのイラストのようにです。その左手にナプキンをかけたくなるような直角で、手の先は同じくシュークリームを指しているあんばいです。なんかのマークのような人です。

じっとみてると怪しまれてもイヤなので(時々目が離せなくなってホモと間違われる傾向あり)、しょうがなくあちこちウロウロしつつレジに注目しておりましたがハンパではないおもしろさであります。

んで、もう一人のロッドスチュワートみたいな髪型の(ということはかまやつひろし的でもある)従業員がいて、どうも時間的にお弁当とかの入れ替え時期で忙しいようです。
しゃがんで一所懸命品だししてたのですが、テノールが戻ってくると「お前恥ずかしいから、あんまりウゼー事しなくていいからさああ」なんて、ブツブツ言っていて彼は「あ、すみませんです」とか「エヘヘ」みたなキュートなカンジの謝り方をしています。

この場合、セブンイレブン的にはこのかまやつ兄ちゃんの(かまやつになっとるがな)言うことは間違っているのです。テノールの接客は正しい。でも、どう考えてもかまやつの苦悩に一票入れたいような気分です。

コンビニにはコンビニ的王道というべき、ある種ツレナイ感じのクールな接客がにつかわしいようにも思われます。
その際、たまーに「いつもこの時間ですね」などと虚を付かれたような、優しげなひと言があったとしてもそれは「ボーナスポイント」のようなありがたさではないですか。

なんてことを考えている間にも、テノールはレジに駆け込んではラーメンには「新しいカップ麺も入ってますよ」だのこの季節になぜかまだある「肉まんもあったまっておりますよ(これはちょっと笑った)」だの、コーディネート販売を心がけておるわけです。

ひとしきり堪能したところで、私は自分がタバコを買いに来たのだ。と気づきました。

すでに途中から私は魅了されていたのです。
現実社会には「星を売ってくれ」とトぼけたことを抜かすカップルに「配達に時間かかりますよ」とか、思い出を袋にいれてやる的な、すっとぼけたキュートな店員さんがいないことを我々は知っています。だが、最高級ホテルのメインダイニングのギャルソンのように最上級の接客をする店員さんはココにおります。髪の毛はボサボサですけど。

なんという高揚感でしょうか。私にもテノールのコーディネイト販売に預かれる権利があるのです。

私はちょっと期待に胸を膨らませて、レジへと向かいました。

「いらっしゃいませ」
レジカウンターに自分で取れよ的にいくつかのタバコが、階段状の什器に入っているのを眺めていると
「お探しのおタバコございましたらお手伝いできますよ」
素敵。「お手伝い」です。最高に嬉しい一瞬でした。
「あのう。フィリップモリスのロングを2つ」
「はいはい(什器にはなかったよう)」背中を向けて、華麗にターン。「お客様、フィリップモリスはスーパーライトとワンがございますが、どちら・を?(笑顔で小首をかしげる)」
素敵!
「スーパーライトです。2つね」
「 承知しました(指でVをつくって)ふたっつ。で、ございますね」
すてきです。すばらしく嬉しいです。コンビニで受ける最上級の接客に酔いしれました私。

「それではフィリップモリススーパーライトをお二つで、540円となっております」
チャリチャリ。
「確かに頂きました。あ、お客様」

来た-っ!

「デザートにシュークリームはいかがでしょうか?(微笑&小首)」

それは違うと思う。

 

しばらく私、ここに通います。

(仕事の〆切明日だぞ俺)


2004年05月その他のエントリー