2004年11月20日

レンタルビデオとマジの方

もうおとといの話なんですが。
ここ数日仕事があったので(あったのでって)追いまくられていて一段落。

4日ほど延滞していたビデオを返しに、近くのビデオ屋まで自転車を飛ばしたのです。
こんな深夜でもビデオ屋ばっかりはお客さんがいてビックリするわけですけども、その日はだだっ広い駐車場が半分以上埋まっていてビックリ。

よく見ると道路沿いのノボリが変わっていて納得。
水木と新作半額、旧作100円セールであります。意外とこういうのはみんなよく狙うのですね。

で、自動ドアが開いた途端。ウ。と。
なんか、明らかに雰囲気が違う。

「警察呼ぶならよばんかっ!」と、いかにもシャウトに慣れた腹式発声法の声がいきなりとどろき渡りました。

は。と左手をみるとカウンターの中にしおれた従業員が4人。その前には男が一人。も。30代後半といったところですが、アナタ完璧ですよ。あんこ型のふくよかなからだに真っ赤なジャージ、オニールに違いない奇妙な紋様、赤銅色のデザインパーマに石原軍団しか今時かけないサングラスです。全身から漂うオーラはセミプロではなくプロそのもののように思われます。

ここで、あ、並んでないな空いてるな。と、思ってはいけません(あたりまえ)。そんなん後ろに平気で並んだ日にゃあなた。火中の栗を拾うってか栗くらいなら拾ってもいいよと思うほどのマジな方に違いありません。

あ。マズイところに来ちゃったな。出直したほうがいいかしら。と、一瞬考えていると風が吹き込んでいるのに気づいたのか、イキナリくわっとこっちに顔だけ向けました。

きゃいん。

あ、入っちゃったよやべえよマジな方は困るよぅんよぅんよぅん(心理的エコー)。
するとマジな方はそれどころではなかったらしく、また元に戻りバーンっとカウンターをたたき「ナメとんか貴様らはおーーー(上がる)!」ガーン。カウンター蹴る。
女性スタッフの小さな悲鳴。

しょうがないのですぐそばのCDコーナーにそっと入り、商品を見るふりをして釘付け

どうやらスタッフはどうもすみません的な事を言っているのですが、そのたんびにマジの方はエスカレート。しまいにゃ「客をなんと思っとーとか貴様ら」というが早いか銭形平次のように小銭をぱーんっと投げつけました。チャリーンっと甲高い音が店内に響き渡ります。これはいけない。

ドエライ所に来てしまったもので。僕ドエライもんです(何が言いたい)。
そこへです。いきなりサイレンが近づいてきて(恐ろしく急に近づいてビックリ)自動ドアがバーンと開いて警察官が3人ぶらーっとはいってきたのです。

いきなり気色ばむマジな方。
「何をしてんだ」とふらふらと近づく警官。
「何もしとらんっ。こいつらが接客がなっとらんから抗議をしとったい」

ザ・博多弁ですが、「抗議」という単語が美しいです
警官は特に驚くでもなく緊張するでもなく近づきながら「まあまあ」と言いながら、「とにかく車にのらんね」と穏やかな口調で距離を測っているようですが、いきなりわしっと手を握る。マジな方激怒して手を振り払おうとする。が、離れない手に観念したように急におとなしくなる。

「こいつらは客をバカにしとろうが。いっちばんしたらいかんこと」とボソボソ(でもデカイ声)でいいながら、「まあまあ」攻撃でなだめられながら連れて行かれました。店長らしいがっちりした男と残った警官も外へ。

一件落着でございますね。
しばらくすると店長らしき男がまた店内に戻り、のぞき込みとパトカーはサイレンは鳴らさないもののくるくる赤い光をまき散らして去ろうとしておりました。その瞬間こもったように「らーっ」と先ほどのマジな方の叫び声も確かに聞こえたのです。

この店に入ってわずか5分程度の事でしたが実際はかなりの時間が流れていたのでしょう。

ほっと安堵の空気が広がる店内。客商売をしているとこういうことってあるのです。私も経験があります。理不尽なインネンと後々まで想像して適当な言葉さえ迂闊に言えぬにっちもさっちも行かない緊張感あるいは恐怖。解放された瞬間の全身の力が抜けるような安堵感。同情いたしますね。


しかし。この場合はこれが当てはまらなかったのでございます。


店長がカウンターに入り女の子2人と学生風の男に背を向けていると笑うスタッフ。
なごやかなのです。ちょっとビックリ。慣れているとしても実になんというか立ち直りわずか1分といったところです。早すぎ。

私的にはこの空気を一瞬たりとも見逃してはならんと、いち早くカウンターに向かうと(物好き)私を見て他のお客さんもカウンターにおずおずと近寄るような具合です。こちらのほうが普通の反応という気がします。

スタッフもなんちゅーか「お待たせしました」くらい言っても良さそうなものをフツーに業務再開し、延滞料金を支払い終わる間に必死でカウンター内を凝視していたのですが特に変わったこともなく終了。

実はこのビデオ屋で犯罪(的場面)に出くわしたのはこれで2度目です。まあお世辞にも地域の環境は良くはないのですがなにかとトラブルが多いので慣れっこということなのでしょう。

カウンターを立ち去る刹那、髪の毛の長い方の女の子のスタッフが「店長、コレどうしましょうか」とビデオを3本を両手に軽く持って問いかけます。

「んああ、もう戻しちゃっていいよ」と、ちょっと半笑いで答えます。

あのビデオはっ。
おそらくそのビデオはあのマジの方がレンタルしようとしたに違いないと確信しました。返却したものならわざわざ聞かぬでしょうし、おそらくはマジの方はレンタルしようとしてモメたにちがいありません。

ビデオはカウンターの脇、入り口付近の返却されたばかりのビデオを一時的におくスチールの棚に収められました。

これは確認せねば。

私はジャーナリスト魂に燃えて(なんでだよ)その棚を凝視しました。

「キルビル2」
「宇宙のステルヴィア」
「ミルモでポン!」

かなり面白くはないでしょうか。私はアニメに関しては最近はもうサッパリの人なのですが、子供向きのようにも思えますが、パッケージを見る限り かなり萌えちゃいないでしょうか!しかし、もしかしたら子供のために恥をしのんで借りたかもしれません。それにつけても「宇宙のステルヴィア」ってのはだいぶ前に聞いたことがありますが「ミルモでポン!」てアナタ。流行ってますかそんなん。

は。

そこで私は謎が解けたように思いました。多分間違いないと思うのですが、笑ったに違いありません。

笑いとは緩急。笑いとは振り幅でございます。落差が大きいほど笑いを生むというのが、笑いの力学なのです。

展示しておきたいほどにマジな方が借りた「ミルモでポン!」

この破壊力に耐え切れたかどうか。「ふ」くらい笑ったかもしれません。これが自分の子供のために借りたなら、あるいはマジな方も根は子煩悩(決めつける)。耐えることができたのかもしれません。しかし、これが万一、自分の為のプレゼントだったとしたら。「キルビル2」が一本混じっているのがリアルにも思えないでしょうか。

ああ。彼は自分のイメージを押してなお借りたかったのかもしれないではないですか。「ふ」は接客業ではあってはならない「ふ」ではあるまいか。愛の足らない「ふ」ではなかったか。彼の尽きることのない愛を破壊するにふさわしい「ふ」ではなかったかと。

その時、彼らは一瞬、上から目線になったのではないでしょうか。

ま。全部想像なわけですが。

私は釈然としない気持ちのまま、冷たい風の吹く外へと出たのです。
自転車の鍵をはずしていると、さっきの店長が外に出てきて煙草を吸い始めました。その顔には曇りなく、むしろ笑顔さえ浮かんでいるように見えるのです。てか、客が自転車出してるんだから「ありがとうございました」くらい言わんかい。

その時、私は「らーっ」というマジな方の悲鳴が聞こえたような気がしました。

願わくば彼におだやかな気持ちで「ミルモでポン!」をレンタルできる日が来ますよう。
と、思いました。それくらいは願ってあげてもよいのでは。と、思いますのです。ええ。

(事実関係以外はすべて妄想で完結していることにあとで気づく)

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