2005年05月13日
一瞬世界に一人のような気がしました
仕事とはいえ一日中座っていると具合が悪くなってくる。
というわけで、まあ一時間くらいいいだろうと、とりあえずチャリンコでとろとろ走り出したのだった。
いつものように小さな田園の間を抜けて小さな橋にさしかかる。
午後2時の風景なのである。
往来には人の姿もなくバス停に止まっているバスはフヌケのように誰も乗せることなくドアを閉める。
天気は雲は多いが穏やかでどこかから鳥の声が聞こえる。車も思い出したように通るのみ。
チャリチャリと橋を越えそのまま国道に出る。
こちらはいつも通り行き交う車もひっきりなしで。ちょっと少なめかもしれない。こちらもショッピングバッグを下げたおばさんや、
妙に色あせたキャップをかぶったポロシャツのおじさんとすれ違うのみ。
パチンコ屋を過ぎファミレスを過ぎ地球防衛軍本部のような異様な形の家具屋が見えてくる。
その手前は大きな川がある。散歩に良く来る。
早朝はとんでもない数の健康命の人たちが幅10m以上の川幅を挟んで必死の形相で走りまくり、 昼は平均年齢が高いのか低いのかがのろのろ歩き回っている遊歩道になっている。つまりは市民の憩いの場ってなかんじ。
天気が良かったりするとそこのベンチで川の流れを見つめてぼんやりしてると気分がいい。 できればその近くのファストフードの店でコーヒーを買うとさらにいい。
その橋にさしかかって橋の下の様子をうかがうと。ちょっと驚いた。
ひとっこひとりいないのだった。
工事でもやってるのではないか。と思ったけどそうでもないようで、でもよくよく見るとぽつぽつとはいるようだった。 人影があまりに少なくてまったくいないのではないかと思ったのだった。それにしても本当に数えられるくらい。珍しいこともあるのだ。
とりあえずコーヒーを買って自転車はそこの店の前に止めて、知らぬ間に夏仕様の強い緑色になった土手を降りてみた。
ちゃぷちゃぷ川の音が聞こえて、遙か上に見える橋の上を走る車の音も少しこもって小さく聞こえる。無人といってよかった。 そのまま川沿いに数十メートル歩いたらついに車の音もとおーくのごぅーんというような微かなノイズになってしまった。
コンクリートのベンチに腰掛けて、カップのフタを開ければ「パカっ」と開ける音すらやたらと耳につき「ずず」 とすする音も耳障りなくらいだ。
視界には人の姿が、そう、川向こうのずっと右端に老夫婦らしき姿が見えるくらい。
風が吹くと風の音がして遠くで鳥が鳴く声がする。いつもはもうちょっとうるさい音を立てる川ですらちゃぷちゃぷとしか。
何かあったのかしら。と、思いながら煙草に火をつけぼんやりとする。
見上げれば先ほどまではっきりしない空模様だったのが青空の面積が広がっている。
そう思い出せば向こうの橋の上を走る車の通行量も心なしか少ない。
歩道を歩く人や自転車などはハッキリと少ないように思う。チチチチチっと鳥の声がエコーを伴って聞こえてくる。
なにかおかしい。と思う。
川向こうの老夫婦が視界から消えるにおよんでいよいよ落ち着かなくなってきた。
あわてて携帯電話を取り出し友人に電話してみる。留守電だった。うーとかあーとか言ってから切る。取引先にも。留守電だった。
メールを確認してみる。一通もない。珍しく広告やらわけのわかんないスパムめいたのも来ていない。
やがて雲に隠れていた太陽がサーッと川と私の周囲を照らし出す。
ササササっと風が雑草をなでていく音がする。
思わずベンチから立ち上がり立ちつくすのだった。
寂しい。
と、その時心の底から思ったのだった。
しばらくすると、太陽はまた雲に隠れほんの少し世界は暗くなった。
それから少しづつ人が現れてきた。偶然か瞬間のエアポケットか。
私はしばらく動けなかったのだった。
ほんの瞬間、世界一寂しい人間であったのだ。と、思う。
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